どうする、2020年の削減目標 市民が集まり議論した「日本の中期目標を考えるセッション」
2009年5月13日(水)
日本政府は本年6月までに、地球温暖化対策の中期目標(2020年の温室効果ガス排出量についての削減目標)を、決定します。世界全体のCO2排出量について、「2050年までに半分まで減らす必要がある」という共通認識が国際社会で醸成されつつある中で、2020年は、1990年から始まった温暖化交渉の、折り返し地点でもあります。
今年12月に、デンマーク・コペンハーゲンで開かれる気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)では、こうした2013年以降の中長期の温暖化対策が話し合われます。各国でお互いが事前に枠組みを検討する時間を作るため、条約事務局はCOP15の半年前までに、中期目標の数字などについての事務局案を作成することとなっており、各国は通常その前までに自国の中期目標の数字などを条約事務局に提出する必要があります。
中期目標が決まるのは、国際交渉を通じてです。同時に、それは国民的な議論を十分に経て設定されるべきものです。そのためには、国民が必要な情報や背景の知識を得た上で考え、政府に対して意見をしっかり伝えることが大切です。そこで、チーム員である枝廣淳子氏(環境ジャーナリスト)がファシリテーターを務める、「日本の中期目標を考えるセッション」(主催:環境省、共催:有限会社イーズ「日刊 温暖化新聞」事務局)が、5月8日(金)、東京・港区で開催されました。企業、官公庁、NGO、教育界、一般市民、マスコミなど約60人が集まりました。
冒頭で枝廣氏は、国民が中期目標を考える時に何が必要で、何が分かればよいのか、いろいろな情報を得るための場を設けたと、今回のセッションの趣旨を述べました。
続いて、内閣官房参事官・鎌形浩史氏から、中期目標を考えるベースとして、政府の検討委員会がまとめた背景資料『地球温暖化対策の中期目標について』の説明が行われました。資料では、中期目標として、2020年のCO2排出量が1990年度比プラス4%~マイナス25%まで、6つの選択肢が示されています。そして、その実現に向けて、どのような政策を実施すべきかの具体案も、盛り込まれています。
鎌形氏は、何をすればどれだけCO2排出量を削減できるのか、その際、経済がどうなるのか、また次世代のために何ができるのか、を踏まえた上で6つの選択肢が作成されたと説明しました。
次に、この背景資料の数字の作成に関わった3名の研究員から補足説明がありました。秋元圭吾氏(地球環境産業技術研究機構・副主席研究員)、藤野純一氏(国立環境研究所・主任研究員)、松尾雄司氏(日本エネルギー経済研究所・主任研究員)です。
6つの選択肢のうち4つは、「限界削減費用(CO2を1トン削減するのに必要な最低費用)」を指標としています。この点について秋元氏は、先進国間では経済学的な観点から妥当性が高いが、その一方で、各国とも自国に有利な指標を出してきている国際交渉の現状を紹介しました。藤野氏は、限界削減費用を指標とすると分かりやすいが、国内の研究所間でも計算した数字が合わなかったことや、欧州連合などはだれが計算しても同様の値となるような分かり易い指標を採用している点を指摘しました。また松尾氏は、温暖化の被害額に関する問い合わせが多いという現状に触れ、今回資料に入れなかった理由として、日本だけが削減しても地球全体では被害の緩和に資する影響が小さいことを挙げました。
参加者は、それらの情報を得た上で、セッション1「考えるためにさらに何を知る必要があるか」に向かいました。ワールドカフェという小グループのディスカッションで、一人が話している時は、他の参加者は聞き役に徹し、一人ひとりの意見を大切にします。そこで、中期目標を深く考えるために必要な情報が何か、話し合いました。
参加者からは、「中期目標を達成するためのコストは、どうするか」、「それによって国民の生活は、どう変わるのか」、「政府として、どんなビジョンを持っているのか」など様々な疑問・質問が出されました。それを受けて、政府、研究者から、回答およびコメントがなされました。
続いて、セッション2「中期目標を考える」では、中期目標について参加者自身はどう考えるのか、意見を述べ合いました。「まず国民が情報を共有してから考えるべきなのでは」、「適切なレベルでの国民負担に」、「今の生活を維持する前提で考えて良いのか、生活の基盤を見直すところから始まるのでは」など、活発な意見交換がなされました。
今回のセッションについて参加者からは、「いろいろな立場の人から意見が聞けて良かった」「情報を共有する今回のような場をもっと行うべき。人に話すことで、日本中に広まっていく」「危機感を共有して、動くきっかけにするべき」「温暖化対策の技術など、中期目標を考えるための情報を、テレビなどのメディアでもっと紹介して欲しい」などの声があがりました。
最後に、経済産業省の清水淳太郎氏は、参加者から様々な意見が出され、今後のために大変参考になったとコメントがありました。また、環境省の加藤聖氏から、温室効果ガスを削減する制度設計が遅れている日本の現状を指摘する外国の声が紹介されました。それを踏まえ、同氏は、今後、低炭素社会を作るための政策パッケージを国民に示すことが必要、との考えを述べました。
なお、今回のセッション内容は、「日刊
温暖化新聞」で掲載中です。また、政府は、「地球温暖化対策の中期目標に対する意見の募集(パブリックコメント)」を5月16日(土)まで行っています。
今回のファシリテーター(進行役)を務めた枝廣淳子氏。「地球温暖化問題に関する懇談会」(首相官邸に設置)のメンバーも務めています |
将来世代のことを考え続けたと、説明する内閣官房参事官・鎌形浩史氏 |
中期目標を考える資料作成に関わった藤野純一氏(国立環境研究所・主任研究員)、松尾雄司氏(日本エネルギー経済研究所・主任研究員)、秋元圭吾氏(地球環境産業技術研究機構・副主席研究員) |
オブザーバーとして参加した環境省・加藤聖氏、経済産業省・清水純太郎氏 |
ワールドカフェ方式による議論。発言者はグループ内に1つ用意した木のかけらを持ち、それ以外の参加者は聞き役に徹する、という方法です |
参加者からは、今後の日本の進むべき方向性や、今回のセッションの意義を評価する声があがりました |
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