

--音楽ライブに、環境問題や社会問題などに関心を持ってほしいというメッセージを込めたイベントが最近増えています。福原さんは、環境問題に関心を持っているようですが、アーティストとして、こうしたメッセージ性が高い音楽ライブに出演することを、どう思いますか?
「伝えられる場所にいる、こういう仕事をしているからこそ、というのはあると思います。――私じゃなくても誰でもいいかもしれないんですが(笑)、私の場合は"福原美穂"というフィルターを通して伝わり、興味を持ってくれる人が一人でもいるんだったら、率先してやっていくことは、自分にとってもいいことのように思いますね。
これまで、環境と音楽ライブのようなイベントに出させていただいて、そういう場を通じて"歌"―― 歌うことでしか伝えられないんですが(笑)――で貢献できたら素敵だなという気持ちは、いつもあります。それでずっと続けていけたらいいなと思っていますね」
--栃木県立栃木農業高校でのエコ・トークと音楽ライブでしたが、高校生に向けたイベントというのは、どうでしたか?
「生徒たちみんな、熱心に聞いていましたね。意外に生徒のほうが(大人よりも)、新しく知ったことを家で実践したりするじゃないですか? 私もそうでしたけど、何か新しいことを知ると親に教えたいというか(笑)、そういう気持ちで『今日、学校でね~……』と、この話をするんだろうし。広がっていきそうという手応えがありました。あのイベント、すごくおもしろかったですねー。
高校へ行って、こういうイベントをするというのは、すばらしいことだなって思います。みんな、環境問題のことは、ニュースでも気候変動や温暖化が進んでいるということや、動物や自然環境の映画を通してとか、日常、たくさん見聞きはしていると思うんですね。だから5、6年くらい前から知ってはいるとは思うんですけど、じゃあ、実際に自分は何をしたらいいんだろう? となると、わからないっていうのがあると思うんです。私も実際にそうでしたし」
--福原さんが実生活で何かやっているエコロジカルなことはなんですか?
「私も環境問題を知ってからやるようになったことなので、ここ1、2年なんですけど、お風呂のお湯を洗濯に使うといった節約みたいなこと。プライベートは、夜は照明よりもキャンドルを灯して過ごすとか。これ(タンブラー)も、そうです。どこか外に行くときは、タンブラーを持って行きますね。身の回りでやっていることは、そういう感じのことです」
言葉が、福原さんの口から溢れるように出てくるなかで、手に持っていた黒い、それほど大きくないタンブラーを見せてくれた。
「デザインがかわいい、自分好みのタンブラーを1個買っておくと、ずっと使えますね。ムリのないこと……やっぱり続けることが大事と思っているので、生活の一部になることで、できること、ですね」
以前に「タンブラーを使っている」と、話をしたら、ファンから新たにタンブラーが送られてきたと、楽しそうに振り返る。
「家に5個もタンブラーがあるっていうのも、どういうものか?(笑)という気もするんですけどね、エコかどうかわからないですね(笑)。でも送ってくれた人が『タンブラーを使うのなら、(私と)同じ物を使いたい』という気持ちがきっとあると思うので、大事に使っていきたいですね」
タンブラーは玄関に置き、出かけ前にバッグに入れればいいようにしている。バッグが変わったから忘れた、という"ウッカリ"もない。よく行くスタジオには、専用を置いておいたり、ライブ用があったり。使い続けるための工夫を考えたから、忘れることもあまりないと言う。
「私は、できることを続けていくことを大事にしています。というのも、この問題は、例えば国や大きな企業とかが作る大掛かりな装置とかでなんとかなることではないような気がするからです。それに今日やったことが、明日結果となってわかる……というスパンでもない。毎日やれることをやった"3年後、5年後"に、数字として出てくることだと思います。なので、そこはやっぱり意識をして、自分にできることを見つけてコツコツやっていくしかないと思うんですね。それは生活の中でやっていくこと。一人1つでもやり続けて、お互いに助け合わないといけないんじゃないかなって思っています。自分の欲とか利益ばっかり求めていては、タイヘンなことになってしまうのかな、と心配になります」

福原さんは、今起きている問題を真摯に受け取り、きちんと関わりたいという意識を持っている。そして、人としてできることを全うしようとする姿勢がある。その福原さんには、今、新たなテーマがあると教えてくれた。
「贅沢をしないっていうのが、最近のテーマです(笑)。欲しいものが、すぐに手に入る時代なので、そこに甘えず。
そう思ったのは、実家にいる祖母を見て。祖母のような昔の人ってほんとうに物を無駄にしないというのを実感したのが、きっかけですね」
と、つくづく話す福原さんにさらに尋ねると、札幌に暮らす祖母は、野菜や果物は、調理後に皮などは捨てずに土に戻す、洗い物も溜め水を使い、水を流しっぱなしにしない。入浴中にお風呂のお湯でハンカチや下着など小さなものを洗う。……その姿を福原さんはエコロジカルな生活と受け取らず、時代に左右されない一つの生き方、芯の通った生活として憧れを持って見つめている。
「別に水を流しっぱなしにしないというのは、祖母の生きてきた時代なら、普通のことだと思うんです。それを見て育った私にとっても普通のことなんですけど、でも忘れちゃう、流されちゃうこともあって。時代が変わるとできなくなるのが怖いなと思います。だから、そこを頭に入れて自覚していないと、いつのまにか水を流しっぱなしにするような、だらしない生活になってしまうのかなぁという心配はありますね。
自分がいるのが、比較的華やかな業界というのもあるんですけど、そこでちゃんとONとOFFと切り分けて、"自分の生活の仕方はこう"というのを持って、流されないようにしたいと、祖母や母親を見て思いました。そう思えたら、変わりましたよ! 買い物をするときも、この靴は10年後もはいているだろうなって想像したり、これはずっと着るなとか、着なくなったら妹にあげようか。そういうスイッチに切り替わりましたね。
なので、ワタシの今のテーマなんです(笑)、"物を無駄にしない"というのが」
ハキハキとしゃべる口調が耳に心地よい。明るく話す福原さんには、現実を冷静に見据えながらも、未来を憂う気持ちは微塵もないに違いない。そしてこれからやってみたいことを、やっぱり屈託なく教えてくれた。
「イベント当日、やまだひさしさんと2020年までにCO2の排出を25%削減という話をしていて、吸収=削減という意味で、緑を増やすのは手っ取り早そうと思って、ワタシも植林したいと思うようになりました! 最近、東京ではビルの屋上や壁面にも緑があるし。『福原美穂の樹』があったら素敵だな。成長の記録とかブログでやってみてもおもしろそうですね! 『みんなも樹を持とう!育てよう!』って(笑)。夢がある感じでいいですよね」
自分ができることを、ただ無心に続けていければいいということを、思い出させてくれる福原さんの言葉。シンプルすぎて、単純すぎて忘れてしまいそうなことだけに、大切なこと。"今、はじめなければ、数年先の未来は変わらない。"少しでもよい方向に変わっていくことを願い、始めよう。--そんな気持ちにさせてくれる。
映画『ディープ・ブルー』
『アース』(2008年)、『オーシャンズ』(2009年)なども観ましたが、2003年の作品『ディープ・ブルー』を家族で観て、圧倒されました。シロクマの赤ちゃんが、(温暖化の影響といわれている)氷解で、棲める場所がなく生きていけないっていうのが、当時胸に響きました。一緒に観ていた妹は泣いちゃって。観たときのことをよく覚えていますね。映画を撮る人も含め表現者は、そういうメッセージを出していく時期なのかなって思いますね。
